ワダからのメッセージ_2017/10

〝自動車業界は、この先、10年、20年、過去の50年よりも大きく変革をするだろう〟

現在、自動車業界で起こっていることで、二つのことが気になっている。

この二つのことはおそらく10年か20年後、つまり将来の自動車産業を大きく変えてい
るだろう。

1908年に、米国のフォードが販売開始したT型フォード車は1927年までに約1700万台
も売ったベストセラー車である。

このT型フォードの出現はまさに産業革命の象徴であり、化石燃料、大量生産による
フォード生産システムなど、20世紀が生み出した工業化社会の代表でもあった。

それから約100年超で、今また、自動車産業の革命が起ころうとしている。

その一つがガソリン(化石燃料)車に替わるエネルギー車である。

トヨタが1997年頃、つまり、20年程前からハイブリッド(HV)車を開発していたのだ
が、その代表が「プリウス」である。

そして日産は2011年に世界初のEV車「リーフ」を発売したが、この両社の戦略を上回
る動きがヨーロッパ勢で出てきている。

特に最大手のVW(フォルクスワーゲン)は現在1000万台強を売るが、そのうち中国で
約400万台を売り、いずれも世界トップである。

VWは、中国やイギリス、フランスが「2040年までにガソリン車やディーゼル車の製造
販売を禁止する」と表明したことに追髄し、中国の環境問題対策も相まって、ガソリ
ン車を禁止する方針を打ちだしたことで、その戦略を明確にした。

何故なら中国の2016年の新車販売台数は約2800万台、米国の1.6倍、日本の5.6倍にも
なり、当分、世界最大のマーケットとなる。

中国政府の一存で全てが決まる国である。

だからトヨタをはじめ各社はEV開発・生産・販売にシフトを変えざるを得ないのであ
る。

ルノー日産のゴーン氏も中期経営計画を発表。

「2022年にはEV車を3割にする」という。

電気自動車は新興企業のテスラなどが注目を浴び、イノベーション(改革)のきっか
けをつくった。

もう一つの動きは「自動運転」だ。

人に代えてシステムが自動車を運転する仕組みで、カメラやレーダー、位置情報など
のデータを取得し、周囲の状況を把握するのが第一段階で、次に集まった情報をもと
にどう車を動かすべきか、人工知能(AI)などIT(情報技術)を生かしてシステムが
判断する。

技術進歩に伴い、世界の自動車メーカーが2010年頃から本格的に開発を始めた。

自動運転レベルは技術に応じて、5段階あり、レベル2までは「運転の主体は人」と位
置付けている。

「レベル5」は全ての運転作業に人は介在しない。

この自動運転車にはIT企業の雄であるアップルやグーグルも参入を意思表示し、研究
に入っているという。

自動車産業は部品等も含めて、最大の産業であり、その方向によって、「新しい産業
革命」があらゆる業界に影響を及ぼしてくる。

この自動車業界を筆頭に、2020年から2050年までの30年間で、世界の産業構造、ライ
フスタイル、地球環境、国力などが大きく変わることは必至である。

※EVのことをさらに知りたい方は「週刊東洋経済(10月21日号)で特集を組んでいま

1.倉庫内バイト、異例の高時給 By 日経(2017.10.3)

人材派遣のワールドインテックは9月から倉庫内作業のアルバイトを異例ともいえる
高時給で募集を始めた。

週40時間以上働き、夜勤をする場合の時給は1600~1875円、他の勤務形態も1470円以
上と通常と比べて50円引き上げた。

無欠勤などの条件を満たせば追加で週1万円が支給される。

時給額の適用は10月1日から12月25日まで。

派遣先は電子商取引(EC)大手が小田原市に持つ物流センター、同様の業態の平均時
給は1000~1100円程度、ここまで高い「リッチバイト」になったのは年末商戦に向
け、短期で300人を集める必要があるためだ。

これからますますこのような物流センターや外食などで、バイト募集は熾烈になる。

2.シェアリングエコノミーと自動車産業の行方!

これからのビジネスの一つはシェアリングビジネス(エコノミー)といわれている。

現存しているものを再活用して有効活用する。

経済学的にいうと「物的資本生産性の向上」である。

車や駐車スペース、空き家、マンションなどに米国発のスマホ(IT)を使ったビジネ
スが成長している。

その代表は車のシェアリングを始めたウーバーである。

創業者は退任に追い込まれたが、企業価値は600億ドル(約7兆円)もあるという。

これに目をつけたのがソフトバンクグループで今やウーバーの2割前後の株式取得に
動いていると報道された。

ソフトバンクは中国やインドなどのライドシェア企業にも出資している。

このシェアリングビジネスを可能にしているのがネット技術の進化とスマホの普及
で、双方をリアルタイムで引き合わせることが可能になった。

事業者は双方の仲介や料金決済などの仕組みを提供し、ITと自動車という二大巨大産
業の接点は、それぞれのプレーヤーを引き寄せる。

前者にアップルやグーグル、アリババ、後者はトヨタ、ホンダ、GMなどで、各社と
も、ライドシェア大手への資本参加や提携に走っている。

しかし一方で「自動運転が普及すれば、ライドシェアビジネスそのものも存在意義が
問われ、崩壊する」と言う人がいる。

いずれにしてもこれから10~20年で大変化が起きる。

参照資料:添付ファイルの「ライドシェアを巡る業界地図」

3.これからの企業経営を根本から変えるかも知れない「ESG」!

今、世界的企業が「ESG投資」に戦々恐々としている。

「ESG」は、世界中で投資されている資金(ファンド)の4分の1にあたる約2600兆円
が各企業やプロジェクトに投資されている。

この投資ファンドは環境問題のEnviroment(E)、社会問題のSocial(S)、企業統
治のGovernance(G)の視点から、投資を行うというものである。

企業が環境問題にふれるような形で資源調達していないか?というのが視点である。

例えば、今、東京オリンピックに備えて国立競技場の建設をしているが、マレーシア
産の木材を使用しているため、これを使っているゼネコンに「マレーシア産の木材使
用をやめなければ投資から撤退する」と勧告したのである。

あるいは洗剤にパーム油脂が使われているが、このパーム油脂の労働に子供が利用さ
れていれば人権問題に接触する。

このように、「持続可能な社会に貢献する会社に投資をしていく」というのがESG投
資の考え方である。

安くて、どんな環境でも資源や労働力が確保できればそれで良いという旧来の資本主
義の発想が通用しなくなる時代が来つつある。

4.最近、話題になっている日本でノーベル賞を受賞された方々の心配の声!

今年は生理や医学、物理などで4年連続で続いた日本人の受賞が途絶えた。

こういったことや、今、日本の学生が物理などの分野で大学に入学して来る数が減っ
ていること、研究者になる人が減っていること、政府もこういう分野の予算を削減し
ていることにノーベル賞を受賞された方々が警告を発している。

「このままでは10年後以降、日本は研究や技術分野で世界の二流国に成り下がってし
まう」というのである。

少子化時代、資源のない日本において、最大の資源は「人財」だと国のリーダーも分
かっているはずだと思うのだが・・・。